VMware プライベートクラウド環境が Azure 上で動く "Azure VMware Solution (AVS)" について、改めて整理してみたので紹介したいと思います。今年中に東日本リージョンで展開が予定されていますが、詳細はまだなので待ち遠しいですね。
Microsoft Azureとは?
Azure VMware Solution(AVS) はパブリッククラウドであるMicrosoft Azure、この中で提供されるサービスの一つという位置づけになっています。そのためAVSの話に入る前にそもそもAzureとは?というところを少し紹介します。
Azure を一言で言うとマイクロソフトが提供するパブリッククラウドということになります。色々な特徴がありますが、特に重要なキーワードを三つあげてみました。
一つ目は現在60を超えるリージョンでサービスを提供しているグローバルクラウドであることということが挙げられます。
世界中どこにでも同じような感覚でリソースを作ることができますし、国内でも東日本と西日本の2つのリージョンを提供されており、国内に限った災害対策を実現することもできるようになっています。
二つ目はセキュリティを最重視していることが挙げられます。
みなさんが日々利用している様々なクラウドセキュリティ機能を提供しているのはもちろんですが、Azureだけではなくクラウド、それからインターネットを安全に利用できるように年間10億ドルを越えるサイバーセキュリティ対策の投資なども行なっているとのことです。
そして、三つ目はエンタープライズのお客様に安心してクラウドをご利用いただける証の一つとして数多くのコンプライアンスに取得しているということが挙げられます。
Microsoft Azureでは、いわゆるISOなどの国際標準はもちろんですが、PCI DSS などの各業界での認証規格、それから例えば日本で見るとクラウドセキュリティゴールドマークなどのローカル認定も取得しており、エンタープライズのクラウドとして安心して利用できるような環境を整えています。
では、実際にどのようなサービスを提供しているのか、それをぎゅっと表したものが次のスライドになります。
Azureでは、現在250を超えるサービスが提供されており、ここに記載しているのはそのうちの代表的な100個ほどになります。詳細はこちら。
それぞれのサービスは一つ一つ独立しており、かつSLAを定義されたサービスになっているので、いずれか一つだけを使うこともできますし、或いは複数のサービスをパズルのように組み合わせて、より高度なシステムを構成することもできるようになっています。
おおまかにPaaSとIaaSのレイヤーがあり、例えばPaaSのレイヤー上側を見ると、コンテナですとかサーバレス、Web系の仕組みとかデータ分析とかAIとかです。
一言にPaaSといっても、本当にいろいろなサービスをこの中で提供しています。
同じくIaaSの世界においてもベーシックなコンピュート、ストレージ、ネットワークといったものを提供しており、また、ハイブリッドというキーワードにも最近力を入れているようで、パブリッククラウドであるAzureという枠組みからさらに出た外の世界、そちらも統合的に管理していくような仕組みといったもの、いろいろ提供を開始している状態です。
また、これらはみなさんがビジネスで安心して利用できるよう、包括的な管理、セキュリティの仕組みといったものも重要になってきます。
Microsoft Azureでは、それらも左右のブロックのほうで確認ができますように、様々な管理や責任の仕組みといったものを提供しています。
Azure VMware Solutionとは?
それでは、ここからAVSがどのようなサービスなのかを見ていきたいと思います。
AVSは冒頭でも紹介した通り、パブリッククラウドであるMicrosoft Azure、この中で Microsoft のファーストパーティサービスとして展開されるVMwareプライベートクラウドという位置づけになっています。
VMwareの言葉で言うと、SDDCを構成するコンポーネントとなる、例えばvSpherer、vCenterといたものが提供されます。
この環境はいわゆる一般的なパブリッククラウドとは異なりハードウェアレベルでお客様ごとに完全に占有、そして分離された環境として提供されるようになっています。
具体的な特徴は後ほどご紹介しますが、AVSはVMwareの正式な認定や認証を受けたサービスになっていますので、皆様が現行オンプレミスでご利用中のvSphereの環境との連携が強く設計に意識されています。
そのため例えば仮想マシンを一切止めることなく、かつ必要であれば IP アドレスや Mac アドレスこういったものを変えることもなくオンプレミスから仮想マシンをAVSへ引越ししたり逆に戻したいと言ったことができようになっています。
また、単純に仮想マシンをオンプレミスから引越しておしまいではなく、Azureネイティブで提供されている、例えばセキュリティや管理の仕組みと組み合わせることによって、より高度な運用やシステムの最適化を実現できるようになっています。
このようにAVSはオンプレミスで動いているシステムを、非常に簡単に、そしてスピーディーにクラウドへいこうしつつ、さらに最適化をはかっていくことができるような手段になります。
ある意味、究極のリフトアンドシフトソリューションではないでしょうか。
代表的なユースケース
ここで代表的なユースケースをいくつか挙げてみました。
まずあるのはデータセンターの拡張もしくは縮小、廃止に伴うクラウドの活用。
そして、BCP対策としてクラウド環境を活用することで、利用しないときは停止して起き、必要な時に立ち上げることで、大幅なコスト削減を実現します。
あとは、クラウドのメリットである、スピーディーかつシンプルなクラウド移行を実現です。移行方法はいくつかありますが、AVSを利用することでL2延伸によるvMotionで、今まで利用して環境をそのまま利用することも可能です。
そして、アプリケーションのモダナイゼーションということで、アプリケーション改修を最小限もしくは実施せずに、最新技術を活用したクラウド環境へプラットフォームを置き換えることが可能となります。
ただし、AVSがクラウド移行の唯一の選択肢でありません。同じような、リフトアンドシフトのアプローチとして、IaaS仮想マシンへの移行という選択肢も当然考えられます。
IaaS+AVSも選択の1つ
よく、IaaSがいいのか、それともAVSがいいのかという話を聞きますが、どちらか一方を選択するというものではなく、システムごとの要件に応じて最適なものを選んで、そして組み合わせて使っていただくことが望ましいと考えています。
一般論で言うと、IaaSのほうがよりクラウドらしい柔軟性や拡張性といったメリットを享受しやすくなりますが、IaaSの場合は、仮想マシンとはいえ、どうしても既存環境からの移行に対する工数が発生したり、ものによってはシステムの改修が必須になってしまうケースもあります。
そのような時にAVSを活用いただくことで、移行の様々な問題を解消できる可能性があります。いろいろなメリットがあるんですけれど、典型的なシナリオが右側に記載している3つの部分になります。
例えば、既存のシステムがアプリケーション上の制約であったり、あるいはよくあるケースとして担当者が不在で、IPアドレスを変えることのリスクも取れませんといったシステムがある場合に、IaaSだとなかなかIPアドレスを変えずにといったことは難しいんですけれど、AVSであればIPアドレスを維持したまま移行することができるようになっています。
また、移行の手段としてもVMwareが提供するHCX vMotionといった機能が使えるようになっていて、こちらを使うことでダウンタイムなしでオンプレミスから移行できる点もおおきなポイントになります。
それと意外と需要が多いのが3点目です。
AzureではサポートされるOSのレベルが明確に決まっていますので、例えば非常に古いレガシーOSですと、移行できない可能性があります。
一方VMware環境では非常に古いレガシーOSも含めて、vmwareによる稼動確認できたものが、リストとして公開されています。
AVSで稼動させる場合もこのリストに完全準拠する形になるので、当然古いOSの中のサポートまではできませんが、少なくともそのシステムを立ち上げるというところまでは、できるようになっているので、この点も古いシステムをある意味塩漬けで移行させるといった観点では、大きなメリットになるかなと考えています。
あとは、この後触れますが、AVSもAzureもどちらも同じAzureファミリーとなっていますんで、どちらを採用する場合であっても、Microsoft関連のライセンスをお得に使えるなどの得点が享受できるようになっています。
ここまで、Azure、そしてAVSの概要をご紹介してきましたが、次回は、もう少し具体的にAVSの価値や特徴を紹介していきたいと思います。
今日はこの辺で。